ヨクイニンとハトムギは違うもの?文献では煎じて飲むかご飯かお粥に

2018年6月19日

烏兎匆匆、本当に日々が過ぎるのは早いもので、毎度のんびり更新しており申し訳ありません。

烏兎の素材紹介のコーナー、第10弾はお料理でも化粧品でも大人気のハトムギをご紹介します。

ヨクイニンとハトムギは違うもの?文献では煎じて飲むかご飯かお粥に

ハトムギ画像

ハトムギ、漢方ではヨクイニンという名前でたくさんの漢方薬が出ていますね。

「飲んで治す肌あれ、シミ」とか「イボ、ニキビに」など、症状に合わせた商品が並んでいます。

その品ぞろえたるや、定番のクラシエや小太郎漢方製薬のヨクイニンエキス錠「コタロー」、はたまたヨクイニンタブレットやヨクイニンエキス、ヨクイニン錠、サプリなど・・・、たぶんヨクイニンは売れ筋商品なのでしょうね。

ある程度の年齢になって首もとあたりに出るイボは『老人性イボ』といいます。
首イボと呼ばれることもありますが、いやー・・・、老人性と言われてしまうと・・・少なからずショックを受けますね。

正式名称は脂漏性角化症ですが、老人性疣贅とも言います。
原因は皮膚の老化によるものですが、紫外線が原因のひとつでもあり、早い人では20代から見られます。

年を取れば取るほど割合は増え、80代ではほぼみられる症状のひとつです。
芸能人でもテレビで首のあたりがアップになると、ポツポツと見えていることがありますね。

初めてこれを見つけたときのショックときたら・・・きれいになるものならきれいにしたいですよね。

というわけでヨクイニンの漢方薬に手が伸びそうになる日々です😅

本筋に入る前にまたまた話が脱線しますが、症状に合わせて漢方薬を飲まれる方も多いかと思いますが、脾・胃が弱っている方は、そちらを先にケアしないとどんなによいお薬を飲んでも吸収されませんのでご注意ください。

お薬やサプリが効かないと感じている方は、まずご自身の脾・胃が弱っていないか確認してみてくださいね。

また、体質に合わないものを取ってもよくありませんので、やはり漢方薬は自己判断ではなくお医者さんや薬剤師さんなど、専門家と相談して服用するのがよいと思います。

さて、はと麦(ヨクイニン)は漢方薬でも「イボ」や「シミ」に対応していることからもわかりますが、化粧品でも大活躍しています。

ヨクイニンとハトムギ

まず、ヨクイニンとは何?って思いますよね。
なんとなくわかるような気がするけど、ハトムギとは違うの?って。

ヨクイニンはハトムギの皮をむいた種子です。
(ハトムギは「ハト麦・はと麦」や「鳩麦」と書くこともありますが、同じものです)

ハトムギ画像

薬膳素材でもこの時期よく使われますが、食品として使う時は名前が「ハトムギ」で、医薬品になると「ヨクイニン」になります。

ただ、同じものだから一緒というわけではなく、「ヨクイニン」は医薬品ですので、薬局でしか買うことができません。

さて、ヨクイニンとハトムギの違いを理解したところで、次はハトムギ茶と麦茶の違いをお伝えしましょうか。
なんだか、同じもののような気がしますよね。

はと麦茶と麦茶の違い

まず、はと麦茶はハトムギを使ったお茶ですね。

ハトムギ茶画像

さきほどヨクイニンはハトムギの皮をむいた種子とお伝えしましたが、一般に売られているはと麦茶は、皮をむかずにそのまま焙煎したものです。

一方、麦茶は大麦を使ったお茶です。

麦茶画像

ハトムギと大麦は同じイネ科の穀物なのですが、ハトムギはジュズダマ属になり、麦よりトウモロコシなどに近い植物です。

トウモロコシ画像

スーパーの麦茶売り場で探してもらうと「はと麦入り麦茶」という製品が売っていると思います。
ハトムギ茶と麦茶は違うものなのだということがわかりますよね。

ハトムギの効能・効果

ハトムギははと麦茶のほか、薬膳ではハトムギをご飯に入れたり、スープに入れて食べたりして、よく使われる素材です。

ハトムギご飯画像

特に梅雨から夏の時期によく目にすると思います。

これは、季節的なトラブルにハトムギが合っているためです。

ハトムギは化粧品もたくさん出ていることからもわかるように、美容効果に用いられることが多いようです。

その理由ですが、ハトムギは古くからイボ取りとして民間薬にも用いられていますので、ここからハトムギの美容効果が期待されているのだと思います。

「イボ」の中には先ほどお伝えした「老人性イボ」や「水いぼ」も含まれています。
また、ニキビもそうですね。

ハトムギを使った商品を見ていると「美白」とか「肌を整える」などの表記がありますが、ハトムギは大変栄養価の高い食材で、タンパク質と食物繊維が豊富でミネラルや鉄分も含まれます。

新陳代謝を促す作用に長けていますので、美容効果が期待できるのかもしれません。

また、漢方ではハトムギは体内の余計な水を排出してくれますので、その結果、むくみがとれてスッキリするのかもしれませんね。

素材が身体に合えば他にも多くの効果が出てくるかもしれませんが、ネットでちょっと調べると、これはいささか怪しくないか?と思うものもありましたので、気をつけたいところではあります。

疑問イメージ画像

特に冒頭にも書きましたが、化粧品はどうなんだろうと思うところがありますので、もう少し掘り下げていきましょう。

次にそんなハトムギには、副作用はないのでしょうか?

ハトムギの副作用

ハトムギを飲むことで何かトラブルが出ないか気になる方も多いかと思います。

まず、これは副作用ではありませんが、はと麦はイネ科ですので、イネアレルギーがある方は摂取をお控えください。

ハトムギ画像

それ以外ではカフェインもなく、妊婦さんや赤ちゃんにも飲めそうな感じがしますが、実はこのハトムギ、日本産科婦人科学会では『妊婦さんの摂取は控えるように』としています。

文献にも「妊娠中の多量なハトムギの摂取は流産の危険がある」と書いてあるものがありますので、やはり妊娠中は控えた方がよいかもしれません。

また、いつも取り上げさせていただいているウチダ和漢薬の生薬の玉手箱にちょっと気になる記述がありました。

ハトムギ種子に含まれる油状物質中の主成分コイクセノライドには抗癌作用があり、また大量のパルミチン酸は小動物に呼吸麻痺を引き起こすことが報告されています。ハトムギは比較的安価であり食料としても利用できそうですが、古来食用には利用されてこなかったことはこうした毒性に因っているのかも知れません。https://www.uchidawakanyaku.co.jp/tamatebako/shoyaku_s.html?page=060

ハトムギには抗がん作用もあるんですね。でも、毒性もあるので昔は食用ではなかったと書いてあります。

多少なりとも毒性が含まれるものは、妊娠中はやはり避けておいた方が無難ですね。

また、たくさん飲みすぎて下痢をしたりというのは副作用ではないと思いますが、体を冷やしますので、冷たいものの取りすぎにも注意したいところです。

この後でまた述べますが、ハトムギは体を冷やす性質がありますので、温めて飲んでも体が冷えます。

冷えは妊娠中は特によくないですし、冷えやすい体質の方や、妊娠を希望している方もあまり常用して飲まない方がよいかもしれません。

漢方では?

漢方では、ハトムギはこのようになっています。

  • 五味:甘・淡
  • 五性:微寒
  • 帰経:脾・胃・肺

主な効果としては理湿(体内の余計な湿を調える)、清熱(熱を冷ます)、脾を調える、排膿ですね。

先ほど引用したウチダ和漢薬の生薬の玉手箱ではこのように書かれています。

ヨクイニンは肌を美しくする薬物、また服んで効くいぼ取り薬として良く知られていますが、これは民間的な利用方法です。ヨクイニンは『神農本草経』の上品に記載された薬物で、同書中では「筋肉が拘攣して屈伸できなくなったものや慢性の神経痛を治する」薬物として記されています。
https://www.uchidawakanyaku.co.jp/tamatebako/shoyaku_s.html?page=060

ハトムギが肌を美しくするのは、民間的な利用によると書かれていますね。

また、このようにも書かれています。

陰陽五行説では「白」は肺経に入りますので、ヨクイニンには清肺の作用があるとされ、また味は淡泊であるので滲湿、利水の作用があるとされます。『神農本草経』に記された「慢性の神経痛」に対する薬効は後者の効能と言え、その他、排膿、消腫、利尿、消炎、鎮痛など多くの効能を有しているものヨクイニンの滲湿、利水の効果によるものと考えられます。
https://www.uchidawakanyaku.co.jp/tamatebako/shoyaku_s.html?page=060

多くの効果が滲湿、利水の効果によるものと書いてありますね。

つまり、体内の余計な水の排出によっていろいろな効果が出ているのだということになります。

水イメージ画像

ということはつまり、体の中で働く効果と考えられますよね。

化粧品などの肌に直接塗るものは、表皮への影響はあるかもしれませんが、根本的なヨクイニンの利水効果である「体内の余分な水を排出する」までの働きはないように思えます。

ちょっと長いのですが、こちらも引用しておきます。

 『本草網目』では、「薏苡仁」の主治は「脾を健にし、胃を益し、肺を補し、熱を清し、風を去り、湿に勝つ。飯として炊いて食べれば冷気を治し、煎じて飲めば小便熱淋を利す。」と記され、附方の項では、水腫喘急、沙石熱淋、消渇飲水、肺癰喀血などに用いる方を紹介しています。その中で、「薏苡仁」の服用方法として、煎じて飲む他に、ご飯あるいはお粥として食べる方法があることが記されています。現在でも「薏苡仁」は薬用とされる一方で、穀物として利用されることもあります。附方の項では、「薏苡仁飯」、「薏苡仁粥」が掲載され、「薏苡仁飯は冷気を治す。薏苡仁をよく搗いて飯として炊いて食べる。」「薏苡仁粥は、久風湿痺を治し、正気を補し、腸、胃を利し、水腫を消し、胸中の邪気を除き、筋肉の拘攣を治す。薏苡仁を末にし、粳米と共に粥に煮て毎日食べると良い。」「薏苡仁粥は、消渇飲水の効がある。」と記されています。

 日本の民間療法でも、「薏苡仁」をお粥として食べると、体の筋がこわばるのを治し、また糖尿病にもよいとされています。また日本で「薏苡仁」は疣取りの妙薬として有名で、1日分10?15gを単味で煎じて飲む、あるいは同量の木賊と共に煎じて常にお茶のように飲むと効果があるといわれています。この他にも「薏苡仁」は、煎じて飲むと、滋養強壮の効があり、皮膚のつやもよくなるとされています。近年では、穀物としての価値も高く評価されており、「薏苡仁」を料理に使用して食べる人も増えているようです。『本草網目』には、疣取りについての直接の記載は見当たりませんが、水の滞りを去ることが疣や浮腫など体内の余分な水分を除くことにつながるようです。
https://www.uchidawakanyaku.co.jp/tamatebako/shoyaku_s.html?page=204

『本草綱目』とは中国で明の時代の薬学書ですが、それにはヨクイニンはご飯に入れて炊くか、お粥で食べること、もしくは、煎じてお茶で飲むとよいと書いてあります。

本草綱目画像
画像引用:研医会図書館 http://ken-i-kai.org/homepage/index0902.htm

そして最後に、水の滞りを去ることが疣や浮腫など体内の余分な水分を除くことにつながると書いてありますので、やはり体内で気血水の水を調えることが、すべての効果の基本となっているということですね。

気血水画像

なるほどなるほど、です。

日本は島国で海に囲まれているため、もともと、日本人は湿のトラブルを起こしやすい体質にあります。

海イメージ画像

そのため、水滞や水毒を抱えている方はとても多いんですね。

舌診といいますが、手鏡を持って舌をべーっと出してみて、舌がむくんでいたり、舌のふちに歯型のギザギザが付いている方は水毒ですので、確認してみてください。

舌を出した一つ目小僧イメージ画像

また、むくみやすい、関節痛がある、なども水のトラブルの場合が多いですね。

そんな水を排出してくれるというハトムギが人気がある理由が、わかりますよね。

興味を持たれた方は、食材のハトムギはスーパーなどで気軽に手に入りますので、ご飯に入れて炊いたり、スープに入れてみたり、もちろんお茶として飲んだり、いろいろ楽しんでみてくださいな。

それでは今日は、ハトムギをお送りしました。

また次の素材を楽しみにしていてください。

ありがとうございました。

烏兎

Posted by Master