お釈迦さまの恵み、甘茶の話
烏兎の素材紹介コーナー、16弾。今回は甘茶をお届けいたします。
甘いお茶は好きじゃないという方もおられるかもしれませんが、少し不思議なところのある植物ですので、よかったらお読みください。
甘茶の話
甘茶というとお釈迦さまの誕生日、灌仏会(花祭り、生誕祭など)でふるまわれるお茶として有名ですね。
お釈迦さまが生まれたときに天から降り注がれたという甘茶。
その正体はアジサイ科(ユキノシタ科)の植物でガクアジサイの変種です。
別名、小甘茶ともいいますが、「コアマチャ」って、なんだかカワイイですね😊
見た目はガクアジサイに似ていますが、アジサイは品種が多く、甘茶が自生していても、見分けることはとても難しいそうです。
そのため、甘茶に使われる品種はほとんどが契約栽培されていて、産地は長野、岩手、富山など。多くが漢方生薬に使われています。
甘茶の葉はそのままでは甘くなく、むしろ苦いそうですよ。(※アジサイの葉には毒があるので、絶対に口にしないでください)
甘茶が甘くなるまでには発酵作業が必要で、柔らかい葉を摘んで洗浄、日干しし、その後で加水発酵させます。
発酵は一日ほどでよいそうです。
蒸して発酵させた葉を揉んで乾燥させたら出来上がりです。
ここまでくると葉に含まれる苦み成分だった『グルコフィロウルシン』が「変~身!」とばかりに『フィロズルチン』に変化し、その甘さは砂糖の数百倍~千倍といわれています。
この甘さによって、昔は砂糖の代わりに使われていました。
ぜんぜん関係ないですが、「甘茶でかっぽれ」というお囃子を今思い出しました😁
聞いたことある方、いますか❓
甘茶の味
甘茶は甘いお茶で、しかもその甘さは砂糖の数百倍といわれると、ものすごい甘いお茶を想像するかと思います。(砂糖を入れた麦茶のような?)
確かに甘茶は甘いですが、ですがとても自然な甘さで、単体よりも他のお茶やハーブとブレンドするといろいろな違いを楽しめると思います。
単体で飲むときはお湯を注いで、時間を置くほど甘みが強くなるのも楽しみながら飲むのもよいと思います。(ただし濃くしすぎないように注意が必要です)
烏兎さんは甘茶といろいろなベースとの組み合わせを楽しんでいますが、緑茶などの苦みのあるお茶と組み合わせると甘くなりすぎず、苦味も甘みも引き立てるので甘すぎないお茶を飲みたい方にお勧めです。
和紅茶と合わせると甘い紅茶になりますが、ペットボトルの紅茶のように甘すぎず、また、人工甘味料の味でもない、自然な優しい甘みになります。
ちょっと余談になりますが、一般的に加糖されているペットボトルの紅茶に入っている砂糖の量をご存知でしょうか?
ペットボトルの紅茶といえばコレ、というあのメーカーさんの食品表示から算出すると、少ないもので約20g、多いもので約45g。
お菓子作りをする方ならこのお砂糖の量がパッと思い浮かぶと思いますが、45gの砂糖というと、3g入りのスティックシュガー15本分です。
コーヒー飲料(缶コーヒーなど)、スポーツドリンクなども同じで、炭酸飲料などのジュース類とそう変わらない量が入っていますので、知っていて飲む方がいいですね。
そうそう、ペットボトルといえばお茶の場合は・・・とどんどん余談が長くなってしまいますので話を戻します(^^;)
「時を戻そう・・・」😏
生薬としての甘茶
生薬としての甘茶は、日本だけで使われています。
薬の苦味を和らげるための矯味剤として、そのまま甘味料として(糖分を制限されている方の砂糖の代用として)、また、口腔清涼剤としても使われています。
その歴史は江戸時代にさかのぼり、小林一茶が好んで飲んだそうですよ。
このような飲まれ方だったので、体のどこに働きかけるとか、何に効くとか、はっきりした効果効能はなく、民間薬としてアレやコレによいと伝えられてきました。
旧い書物にも「健康を助ける」くらいの記述しかないという、なんとも頼りにならない甘茶なのですが😅
なんといってもその甘さが大きな特徴ではないでしょうか。
甘茶と甜茶
甘いお茶というと花粉症の時期などに重宝される甜茶が思い浮かびますが、甘茶と甜茶は違うもので、まず甜茶という言葉自体が甘いお茶の総称ですので、もし中国に日本の甘茶を持って行けば、甜茶に分類されるのだと思います。
ここでちょっと甜茶についても触れておくと、甜茶は甘いお茶の総称とお伝えしましたが、様々な種類が存在します。
一般的に甜茶と呼ばれているのはバラ科、アカネ科、ブナ科、アジサイ科などがありますが、花粉症の時期に一躍ブームになった、花粉症に有益といわれている甜茶は、甜茶ポリフェノールを含むバラ科の甜葉懸鈎子(テンヨウケンコウシ)だけです。
しかもそれも、厚労省の調査では対象の半数以上の人が効果がなかったと答えた(しかもいろいろな民間療法の中でもワースト2)という、残念な結果があるのですが、思うに体質に合っていなかったのかもしれませんね。
どんなによいと言われているものでも、ご自身の体質に合わないとよく働きませんので。
とはいえ甜茶は五行では肺、心、肝に帰経があり、はたらきとしては花粉症に合っている素材だと思います。
食欲不振などにも用いることができ、脾胃も整えますし、平性で寒熱に偏らないことから、比較的万人が使いやすい素材かもしれませんね。
さて、甘茶に似た素材といえばもう一点。
甜茶は今のところ当店では取扱いはないのですが、こちらは当店でも以前から販売させていただいております、アマチャヅルです。
甘茶と甘茶蔓(アマチャヅル)
甘茶と甘茶蔓、とても名前が似ていますので、同じものと思っている方や同じものとして扱っているお店などもありますが、甘茶とアマチャヅルも違うものです。
アマチャヅル(別名は甘草)はこちらもで以前取り上げていますが、ウリ科の植物です。
こちらは甘茶と違って葉っぱの状態ですでに噛むと甘みがあり、ですので、自生しているアマチャヅルでお茶を作ることもできます。
甘茶とアマチャヅル茶を飲み比べるとだいぶ味に違いがあるのがわかると思いますが、アマチャヅルの方が少しクセがあって飲みにくいかもしれませんね。
烏兎さんはどちらも好きです☺
甘茶の効能
先ほどお伝えしたように、甘茶は漢方生薬として用いられながら、その用途は主に甘みを加えるというものです。
市場で伝えられている効果効能としては、このようなものが主になります。
薬理作用としては、エキスで、抗腫瘍作用、抗アレルギー作用、抗菌作用、利胆作用が報告されています。民間療法では、糖尿病患者の甘味代用や、胃弱・食欲不振・利尿・口臭除去に茶剤として利用されています。養命酒製造株式会社 生薬ものしり事典 【2014年4月号】釈迦の生誕を祝う花祭りでもおなじみの「アマチャ」
そのほかのサイトでも甜茶同様、アレルギーに効くと伝えているところが多いですね。
これらはあくまでも民間利用としてとご理解いただきたいとは思いますが、甘茶はとても甘いお茶でありながらカロリーがないので、糖分を制限している方にはとても良いと思います。
ただ甘茶は一点、飲む上での注意事項があります。
甘茶の中毒
甘茶はカロリーもなく、もちろんカフェインもありません。
(先にお伝えしたフィロズルチン、イソフィロズルチンのほかタンニンやルチンが含まれています)
厚生労働省のサイトにも有毒成分の存在はこれまでまったく報告されていない
と記載がありますし(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082119.html)、特に副作用も報告されていませんが、2009年と2010年に灌仏会(花祭り)の甘茶を飲んだ子供や大人の集団食中毒が出ています。
いずれも症状は軽症で、調査では食中毒に該当する菌などは見つかっておらず、共通していたのが濃く抽出した甘茶を飲んでいたということです。
甘茶の使用量は1リットルあたり2~3gで十分なのですが、中毒が出た際の甘茶では、その10倍の濃度であったことが報告されています。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/51/2/51_133/_pdf/-char/ja)
※茶葉の量は1リットルあたり2~3gとすることと厚生労働省に推奨されています。
当店の甘茶には「濃すぎないように抽出してください」と書かせていただいておりますが、濃さには少し留意してお飲みいただけたらと思います。
以上、本日は甘茶についてお送りさせていただきました。
※灌仏会(花祭り)と甘茶については、以前こちらのページにも書かせいただきましたので、興味のある方はお読みいただけたらと思います。
それでは、また次回もお楽しみにしていてください。
ありがとうございました。
暦のお茶 烏兎