精霊が宿り福を呼び、千利休が愛用したクロモジ(黒文字)

2022年7月7日

さて、気付けばまただいぶ更新が滞っております(;’∀’)
烏兎の素材紹介コーナー、本日ご紹介するのは第20弾、黒文字です。

精霊が宿り福を呼び、千利休が愛用したクロモジ(黒文字)

本日ご紹介させていただく素材は『クロモジ(黒文字)』です。

クスノキ科クロモジ属の落葉低木であるクロモジは、日本の関東から西、四国、中国、九州などの山間に自生し、大きいもので6メートルほどの高さまで成長します。

黒文字の木

枝葉の香りがよく、古くから各地で楊枝や箸、入浴、薬用に用いられており、日本人にはなじみの深い木になります。
山に入らずとも公園や庭木など身近で目にすることもあり、花も咲き実を付け、紅葉も楽しませてくれる樹木です。

クロモジの花

島根県隠岐の島にある海士町では、クロモジを「福木」と呼び、福が来るお茶といわれています。
クロモジを使ったお茶「ふくぎ茶」をはじめ、こちらではクロモジの精油やせっけんなどが名産品となっています。

クロモジの名前の由来は、枝の表面の黒い斑紋が文字に見えたため「黒文字」という名前が付いたと言われています。

黒文字と和菓子の写真

千利休が愛用したクロモジの枝

クロモジの利用として一般的なのは和菓子の高級楊枝だと思いますが、この黒文字を取り入れたのは彼の茶人、千利休です。

抹茶画像

しかも茶菓子に添えて黒文字楊枝を出した相手が織田信長、豊臣秀吉らというのがロマンある話です。

千利休は気短で気性の激しい戦国武将の気を静めるため、クロモジの鎮静効果を利用したと伝えられています。

そんなふうに古くから民間利用されてきたクロモジ、現在ではメグスリノキや甘茶同様、日本固有植物の生薬として、国内では漢方にも用いられています。

不思議な力が宿るクロモジの効能

千利休が好んで使ったクロモジ、その主成分はリナロールで、リラックスを促すローズウッドの香りは、シャネルのNo.5でもその昔使われていたそうです。

また、森林の香りα-ピネンや柑橘の香りリモネン、バラの香りゲラニオール、ユーカリの香りシネオールなどを含みます。

これら香り成分を見ただけでも、アロマを使う方がこぞって「落ち着きたいときはクロモジを使いなさい」と勧めるのがよくわかりますね。

そのため、クロモジの効能はリナロールの鎮静(抗不安)作用やゲラニオールの美肌、抗菌作用、シネオールの鎮痛、抗炎症作用などがあるとされています。

きっと千利休は、クロモジが戦国武将たちの心を落ち着かせるばかりでなく、戦国時代を生きる彼らの傷や痛みを癒すことも知っていて、あえて用いたのかもしれません。

和菓子

そもそもお茶が日本に渡ってきたのは、煎じ薬として飲まれていたものです。

茶の道の開祖であり織田信長、豊臣秀吉の茶の師匠であった千利休は、お茶のはたらきをよく熟知し、心を整え体を癒す達人でもあったのではないでしょうか。

クロモジ、漢方では?

クロモジは漢方では生薬名を烏樟(ウショウ)といい、薬効についてはこちらを引用させていただきます。

枝葉は民間で脚気,急性胃腸炎に用いる.止血には粉末を患部に塗布する.皮膚病,温補には枝葉を浴湯料として使用する.いんきん,田虫などの寄生性皮膚病には根皮の煎液で患部を洗う.

全体に芳香があり,材でつまようじが作られる.枝葉を水蒸気蒸留して得たクロモジ油は石鹸の香料,香水などに用いられる.熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/004573.php

クロモジは薬用養命酒の生薬の中で、もっとも多く使われている素材でもあります。

ウショウの効果と効能

ウショウには、高ぶった神経を鎮めてよく眠れるようにする作用、痰を除き、咳を鎮めたり、気管支粘膜の充血を取る作用などがあります。また、一時的に血圧を下げる作用も確認されています。

原料となるクロモジの根皮には、胃腸の働きをバランスよく整える芳香性健胃薬としての効能や、急性胃腸炎や下痢などにも効きめがあります。クロモジの枝葉は刻んで入浴剤にすると、神経痛、リウマチ、肩こり、腰痛に加え、体を温める効果もあるので冷え症(冷え性)や、湿疹、小児の皮膚のただれにもよいといわれています。ウショウを薬酒に使うと、煎じたときに比べて香り高い精油成分が効率的に抽出されます。養命酒製造株式会社 生薬」と「薬酒」のなるほど事典 https://www.yomeishu.co.jp/encyclopedia/traditional_medicine/linderae_umbellatae_ramus.html

養命酒と信州大学の共同研究では、クロモジにインフルエンザウイルスの細胞への吸着と侵入を99.5%以上ブロックする効果があることが報告されています。信州大学 https://www.shinshu-u.ac.jp/zukan/cooperation/995.html

このようなはたらきを持つクロモジが、日本固有の植物であるというのが嬉しいですね。

クロモジ茶の味は

くろもじ茶はクロモジの枝を煎じたお茶で、森林の香りを感じさせる芳香が特徴です。

軽い苦みがありますが爽やかさを感じさせ、喉を通った後はスッキリとした後味が残ります。

クセは少なく、単体でも美味しくお飲みいただけますが、ブレンドの香り付けなどにも最適。

当店では暦のお茶 春「春愁」、ゾンビに襲われそうな気分のときのお茶、福来楽茶(ふくらちゃ)でクロモジを使っていますが、いずれのブレンドでも欠かすことのできない重要な素材となっています。

また、当店ではクロモジとベースのお茶だけの「くろもじ茶」も販売しています。
くろもじ茶画像


日本海の島根半島沖合に浮かぶ隠岐諸島の海士町では、古くから「福が来るお茶」として愛飲されているクロモジのお茶。

精霊が宿る木、不思議な力を持つ植物、千利休が愛用したクロモジ。

なんとその素材には、魔除の力もあるといいます。

比類ない香りの良さは、お茶との相性も抜群によい植物です。

それでは、烏兎の素材紹介コーナー、今回はクロモジをお伝えいたしました。

また次回を、のんびりお待ちください。

ありがとうございました。

烏兎

Posted by Master