桑の葉だけの希少なはたらき
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烏兎の素材紹介のコーナー、第14弾は話題の薬草、桑の葉です。
神木だった桑
小学校のころ、学校で蚕を育てた経験がある方はおられるでしょうか?
今でも学校によっては取り入れているところもあるそうなのですが。
桑の葉は絹を作るカイコが食べる葉っぱですが、養蚕の歴史は古く、日本書紀にも登場しています。
桑の葉は、「御蚕様」と呼ばれ大切にされた蚕たちが口にする唯一の葉でしたので、神聖なものとして扱われていたのですね。
桑はクワ科の植物で品種はおよそ千数百種類あるそうです。
漢方ではマグワやヤマグワを用いますが、漢方薬として用いられる桑の根皮(桑白皮、ソウハクヒ)のほか、桑は葉(桑葉、ソウヨウ)や果実(桑椹、ソウジン)も利用され、特にクワの実はマルベリーと呼ばれ、食べたことがある方も多いと思います。
当店のお茶でも桑の葉を使っていますが、桑の葉が持つ効能は注目度も高いようです。
神農本草経には桑の葉茶は『神仙茶』と記載されていますが、やはりどこか神聖な感じがありますね。
今日はそんな桑の葉について紹介させていただこうと思います。
桑の葉の特徴
以前紹介させていただいたクマ笹やヨモギ、それから十薬とも呼ばれるドクダミなど、自然の植物には多くのはたらきを持つものが多いですが、桑の葉にも優れた特徴がいっぱいあります。
栄養成分でいえば、例えば
- 水溶性食物繊維が豊富
- カルシウムが豊富(牛乳の27倍)
- 鉄分が豊富(小松菜の15倍)
- ビタミンA,B1,B2,C,Pなどを含む
- 亜鉛を多く含む
カルシウム、鉄分、亜鉛と摂取しにくい栄養がたくさん含まれています。
これだけでも積極的に取りたくなっちゃいそうです。
ですが桑の葉のもっとも大きな特徴は、桑の葉だけが持つこちらの成分ではないかと思います。
- DNJ(1-デオキシノジリマイシン)
このDNJがどんな働きをするかというと、簡単にいうと糖の吸収を抑える作用です。
そしてこの1-デオキシノジリマイシン(DNJ)は大変貴重な成分で、私たちの身近な植物では桑だけがこのDNJを持っています。
桑に関して、先の栄養に関するデータもそうなのですが、神奈川県衛生研究所などによる機能性食品に関する共同研究事業報告
ほか、科学的に認められていることで注目が集まっているのかもしれません。
DNJの働き方なのですが
1・食事によって摂取された糖分は酵素によってブドウ糖に分解されます。
2・分解されたブドウ糖が血中に入ることで血糖値が上がります。
3・DNJは構造がブドウ糖と似ているため、1の酵素と結合します。
4・結果、1の酵素の働きを抑えることになり、糖の吸収が抑えられ、血糖の上昇も穏やかになります。
(参考 全薬工業株式会社 https://www.zenyaku.co.jp/k-1ban/detail/kuwanoha.html)
DNJは科学的に研究報告が行われていますが、やはり桑の葉の特徴といえば、このDNJの存在ではないかと思います。
桑の葉の効能・効果
さて、桑の葉のもつDNJという珍しい成分についてお伝えしましたが、漢方では桑の葉にはどのような効能・効果があるのでしょうか?
もちろん当店のものも含めて、お茶について効能・効果はお伝えできませんので、ここでは一般的に伝えられていることとして書かせていただきます。
桑の葉の効能・糖尿病
桑の葉は糖尿病の方に関心が高い素材となっているようです。
糖尿病、低血糖の方はふらついたり手のしびれが出たりして気付くこともありますが、高血糖はわかりにくいため、無症状のまま気づいたら糖尿病になっていたなんてこともあるそうです。
多くの場合が健康診断や人間ドックで指摘されるまで糖尿病、または糖尿病予備軍であることに気付かないことがあるようです。
またここ最近はテレビの健康番組などで「血糖値スパイク」が取り上げられることも増えてきましたが、血糖値スパイクとは食後の短時間に急激に血糖値が上がることだそうです。
血糖値スパイクは糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、認知症、がんなど多くのリスクを伴うようで、このようなリスクを持ちながら、発見されにくいところが恐ろしい点です。
血糖値スパイクは痩せてても関係なく、家族に糖尿病に罹患した方がいる場合は注意が必要なのだとか。
もちろん糖尿病の方でも血糖値スパイクを防ぐにも、大前提の基本は食事の取り方に気をつけて、ゆっくりよく噛んで、腹八分に留めておくことです。
それを前提に、糖吸収抑制効果のあるものを副次的に取り入れるのがよいかと思います。
ただ、血糖値に関しては測定以外で正しい状態がわかりにくく、食後に低血糖を起こす食後低血糖
も高齢者では三人に一人の割合で存在するという話もあります。
(参考 オムロン 知っておきたい「食後低血圧」 https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/94.html)
血糖値の異常はわかりにくく、また食べたものや食べ方、体調やストレスなどの影響も受けるため、ご自身の体調をよく感じ取りながら、心配な時は必ず医療機関を受診するようにしてくださいね。
桑の葉の効能・ダイエット
太田胃散の健康食品にその名もズバリ「桑の葉ダイエット」という商品があります。
主な特徴はやはりDNJですが、桑の葉にはそのほかにも食物繊維が含まれているため、コレステロールの吸収を抑える作用も期待されています。
お茶を飲むことで積極的に痩せるというよりも、糖やコレステロールの摂取を抑えることでダイエット効果を得ようとするものですので、今の体型を維持したいなどの方にも向いているかもしれませんね。
ちなみに桑の葉は抗酸化作用もありますので、アンチエイジングも期待したくなりますね。
桑の葉の効能・血圧
チョコレートやココアで有名になったGABA(ギャバ )という名前を聞いたことがあると思いますが、桑の葉にはこのGABA(γ-アミノ酪酸)が含まれています。
GABAは血圧降下作用とストレス緩和作用を持ちますが、こちらも株式会社ヤクルトと富士フイルム株式会社が研究報告を公開しています。
「血圧が高めの方の血圧を下げる」と「ストレスを緩和する」2つの機能を持つ 機能性表示食品「GABA(ギャバ)」新発売 富士フイルム株式会社
このように桑の葉には、血圧の上昇を防ぐ血圧降下と高血圧予防が期待されています。
桑の葉の効能・その他
ほか、桑の葉の効能で特に期待されているのはやはり癌に関するものですが、そのほかに注目されている効能に「腎臓」に関するものと「髪」に関するものがあります。
・腎臓
病気とまではいかなくても、腎臓に何かしらの問題を抱えている方は多く、健康診断のたびにクレアチニンの数値に敏感になっている方も多いかと思います。(クレアチニン濃度の上昇は腎臓機能の低下を意味します)
新潟薬科大学が慢性腎臓病における桑葉の治療効果
という卒業研究論文を公開しています。
桑葉には、抗酸化作用だけでなく、腎臓の線維化の抑制、血管収縮の抑制、および炎症の抑制などに関与していると考えられた
https://repository.nupals.ac.jp/dspace/handle/10801/1048
こちらを読んだ限り、DNJほど「この成分がこの効果を導く」というはっきりしたものではないようですが、関わりはあると推察されていますので、桑の葉の腎機能を助ける働きに期待は持てるのではないでしょうか。
一般的に、桑の葉の持つ利尿作用やGABA、このあとお伝えするルチンにも血圧を介して腎機能を助ける働きがあり、カリウムも老廃物の排出を助けますので、桑の葉は腎臓によい働きをもたらせることが考えられます。
ただし、腎機能が低下している方はカリウムの摂取には注意しなければなりませんので、主治医に相談してから飲むのがよいと思います。
・髪
蚕が絹を作ることでシルクのような髪かと思いきや、桑の葉にはルチン(ビタミンP)が含まれていて、ルチンは髪にいいんですよね。
その含量は多く、東北農業研究によると、桑葉はソバの茎葉に匹敵するそうです。
ルチンには育毛効果があると伝えられています。
桑の葉の抽出液で髪を洗ったらよい効果があったという方の記事もありましたよ。
http://kuwadiet.com/mulberry/86/
髪は漢方では血と大いに関わりがありますので、血圧や血糖で血に影響を与える桑の葉は、髪にもよいということなのでしょうね。
最後に桑の葉の効能を引用でまとめておきます。
血圧降下 / 血糖降下 / 高血圧予防 / 糖尿病予防 / 動脈硬化 / 鎮痛効果 / 解熱効果 / 鎮咳効果 / 去痰効果 / 利尿効果 / 発汗効果 / 抗菌効果 / 脳出血予防 / 脳軟化症予防 / 心臓疾患予防 / 骨粗しょう症(エルゴステロール) / 疲労回復 / 性欲増進 / 冷え性 / ストレス軽減 / コレステロール値正常化 / 発がん抑制 / 子供の成長促進 / 薄毛 / 脱毛 / 火傷
株式会社ストリーム 桑の葉の効果効能 糖尿病予防やコレステロール低下に期待 http://www.1198.co.jp/about.html
桑の葉の摂り方
桑の葉は食べることもできます。
食用を販売してるところもありますし、自生しているものなら食べられる環境のもので、新芽を摘んでくるとよいと思います。
新芽は生でも食べられるほどクセがなく、また、お茶用に桑の葉をたくさん摘んできてもいいですね。
桑の葉茶の作り方については、特に注意点はなく、干せばOKです。
刻んだり細かくする方が、抽出はよいと思います。
また、フライパンなどで炒るとさらに飲みやすくなります。
桑の葉、お茶での飲み方
桑の葉を摘んできて干して刻んでお湯を注げば桑の葉茶の完成です。
桑の葉茶はお茶ですので飲むタイミングなどはなく、いつでもお飲みいただいて大丈夫です。
お茶を煎れるように急須などに茶葉を入れお湯を注いでもいいですし、漢方薬のように飲みたいときは、煮出して飲むのもよいかと思います。
これはどのお茶でもそうですが、できれば温かい状態で、体温以上のものを口にするようにしてくださいね。
飲む量なども食品ですので特に決まりはないのですが、手元にある漢方の書籍には、桑の葉の一日の摂取量は5g~10gほどとされています。
DNJについては全薬工業株式会社によると、このようになっています。
一般的な桑葉製品に関しては、10g程度で必要なDNJ量が摂取できると考えられます。
全薬工業株式会社 桑葉に血糖値抑制効果が! https://www.zenyaku.co.jp/k-1ban/detail/kuwanoha.html
10gくらいですと3回くらいに分けて煎れると、ティーポットや急須にちょうどいい量になるかもしれませんね。
桑の葉茶の味
桑の葉はそれほどクセはないですが、苦味があります。
また、それほど強くはありませんが、やはりハーブ独特の香りもあります。
当店の桑葉茶はベースのお茶とブレンドしているので飲みやすいと思いますが、桑の葉を摘んできて作る場合や、どこかで桑の葉茶を購入したときなども、ご自宅でも飲み慣れた茶葉とブレンドすると飲みやすくなるかと思います。
桑の葉の副作用、妊娠中は?
先ほどもお伝えしたように桑の葉は研究が進められているのですが、副作用は認められないという結論がほとんどのようです。
先ほども書いたように桑の葉は食べることもできますし、桑の葉茶も食品ですので、副作用が心配されるようなことは基本的にはありません。
ただ、自然の物でも必ず人によって合う合わないがあります。
効果を盲信ぜず、ご自身の体と相談しながら飲むことが大切です。
特に貧血や低血糖の体質がある方、漢方で血虚、お血体質にある方などは、血の流れに影響を与える素材は少しずつ試してから取るようにする方がいいですね。
凝縮したサプリなどよりも天然のものを試す、それも量は少なめか、いくつかの種類が混ざっているものを選ぶとよいかと思います。
サプリメントも食品の取り扱いですので薬に比べて安心と思いがちですが、サプリメントも内臓に負担をかけます。
生姜のサプリメントを2カ月服用して薬物性肝障害になったケースもあるそうですよ。
参考 IN YOU https://macrobiotic-daisuki.jp/kanzo-2-116821.html
医薬品で問題になっている「薬が病気をつくる」状態が、サプリメント分野でもおきています。
全日本民主医療機関連合会 【新連載】52.健康食品・サプリメントによる副作用 https://www.min-iren.gr.jp/?p=34472
ちなみにお茶にしても安心してはおれず、雪茶というチベット産のお茶で(この素材は漢方生薬でもあります)、これは主にダイエットが目的のお茶ですが、健康被害が報告されています。
(このケースでは毎日煮出して一日一リットルを欠かさず飲んでいたそうです 国立保健医療科学院 https://h-crisis.niph.go.jp/?p=83857)
副作用について、食品扱いのものであれば、ほとんどの場合副作用はないという報告になると思います。
しかし、人には体質も体調もありますから、どんなに科学的根拠があろうと、絶対に盲信しないで、ご自身の体で確かめながら取っていくというのを心掛けてくださいね。
妊娠中の桑の葉茶の摂取も、カフェインがないことから特に問題ないとされていますが、同様の注意をしていただきたいのと、この後お伝えしますが、桑の葉は体を冷やします。
妊娠中は何があるかわかりませんので、妊娠中もお茶は楽しむ程度の量に留めておくのがよいと思います。
桑の葉、漢方では
桑葉(ソウヨウ)は漢方での性質はこのようになっています。
- 五味:苦、甘
- 五性:寒
- 帰経:肺、肝
漢方での桑葉の大きな特徴は表面の熱を発散させる働きがあることです。
そのため、例えば発熱や蕁麻疹、結膜炎など、熱を持った症状に用います。
寒性であることからも熱を冷ますために使われることがわかりますね。
目が充血しているときや喉や口の渇きを冷ましたり、咳や、「気」が上昇する頭痛やめまいなどにも適応しています。
ただ、先ほどもお伝えしましたが、万人に合うものはありません。
サプリメントなどが販売され注目されている素材は、ともすれば改善例ばかりが取り上げられていることがあります。
できれば飲んでどんな変化があるか、ご自身の体と対話しながら、飲み続けて行くかどうかを検討してもらいたいと思います。
ただ間違いなく言えるのは、食事のときに甘いジュースや砂糖をたっぷり入れたコーヒーなどを飲むくらいなら、お茶に変えましょう。
糖尿病などで甘いものを控えたいときは、ギムネマ茶の甘味を感じなくなるはたらきは助けになります。
糖尿病は、本当に怖い病気です。
透析、脳梗塞や脳出血、狭心症や心筋梗塞、失明、足の切断・・・
その先にあることを、よく想像してください。
糖尿病はサイレントキラーといわれ、自覚症状の出ない病気です。
糖尿病になってしまったら、一生涯コントロールが必要です。
その前に、できることは少しでもやっていきましょう。
そしてもしも糖尿病になってしまったら、病気が進行しないように、少しでもできることをやりましょう。
もちろん、予防はとても大事なことです。
別に桑の葉茶でなくてもいいと思いますが、ジュースをお茶に変えることは、すぐにでもできることのひとつと思いますので、よかったらぜひ取り入れてみてください。
桑の葉は今とても注目されている素材ですが、普段の食生活からこういったお茶を飲んだ方がよいと思われる方は、迷わず取り入れていきましょう。
人の体は年老いて行くにつれて必ず弱っていきます。
ある程度の年齢を超えると、どんな不調も放っておいて良くなることはありませんので、対応は少しでも早い方がよいのは間違いありません。
本当にいつも、病気にならないでくださいという思いがあります。
一日でも早く、できることからコツコツと、体に良いことをやっていってもらえたらと思います。
本日は烏兎の素材紹介から桑の葉を取り上げました。
また次回を楽しみにしていてください。
ありがとうございました。
烏兎